降誕祭の夜

降誕祭の夜 上田信舟初期短編集/上田信舟/全1巻


上田信舟先生が過去に発表した読み切り作品をまとめたもの。



・内容
「DRAGON LOAD」
哪吒(なた)という少年が、全ての悪しき出来事の元凶であるとされる竜王を倒しに行く…というお話。
途中で唯(ゆい)という少女に出逢い、一緒に旅をしていくうちに哪吒は唯を大切に思うようになっていきます。
哪吒の正体は人造人間(アンドロイド)で心を持たないとされていますが、唯はとてもそんなようには思えないのでした。

やがて竜王と対決。竜王を倒すには特殊な剣が必要であり、その剣は竜王自身が持っています。
しかしその剣は心を持つ者でないと扱えません。
哪吒は自分には心がないから無理だと言いますが、
唯が竜王に殺されそうになると唯を失いたくないという一心から剣を抜いて竜王を倒すのでした。

竜王から全ての真実を聞く哪吒。
かつて人間同士が起こした戦によってこの惑星は死に絶え、ドームを作って人類はそこへ閉じこもったと。
そして自分たちが犯した罪の重さに耐えかね、機械によって支配されることを望んでいくことに。
しかしやがて機械に感情を制御された自分たちに疑問を持ち始めますが、それを素直に認められず、
竜王が悪だと決め付けることで心の平穏を保っていたと。

哪吒はドームの人間に作られてそこから派遣されてきましたが、竜王から全てを聞いたことでドームには戻らず、
唯とともに自分が新しい世界を作っていくことを決めるのでした。

「空中ぶらんこ」
サーカス団に所属する中国人兄弟のお話。
二人はいつも一緒で仲良しでしたが、ある時に1人の女の子が加入してきたことで関係に変化が訪れます。
弟は頻繁にその女の子と一緒にいるようになり、兄弟の間には溝ができてしまいだんだんとその溝も深くなっていくのでした。

そんな中で迎えた本番当日。兄弟による空中ぶらんこが行われますが、兄は弟の手をキャッチできず弟は落下。
その事故によって亡くなってしまうのでした。

兄はずっと弟は女の子のことが好きなんだと思っていましたが、実は弟が好きだったのは兄だったと女の子から聞かされます。
自分が他の子と仲良くすることで兄を嫉妬させようとしていたのだと…。

「獣の召喚」
見世物小屋に聖獣の召喚士である少年がやってきて…というお話。
見世物小屋の息子である少年と召喚士の少年は年齢が近いため、すぐに仲良くなります。
そしていつしか見世物小屋の息子は召喚士の少年の綺麗な歌声に惹かれていくのでした。

ある日、召喚士の少年が聖獣に気を吸われている現場を目撃する見世物小屋の息子。
召喚の対価として自らの気を吸わせているということですが…。
見世物小屋の息子は、なぜ自分が召喚士の少年の歌声に惹かれていくのかをその時に悟ります。
自分の奥底で獣が身動ぐ気配がするからだと…。

「降誕祭の夜」
E・Sと呼ばれる神が世界中を荒野に変えてしまった世界。
人々は神のお怒りを鎮めるため、E・Sがこの地につかわされた降誕祭の夜に贄を捧げていました。
その贄に選ばれた少年は、神父と一緒に贄の舞台となる神の祭壇を目指します。
少年は夜になると神父に抱かれ、その度に苦しむのでした。

祭壇へ向かう途中、神父は街で異族の奴隷を買ってきて3人で向かうことに。
贄の少年は奴隷少年と歳が近いこともあり、気を許します。
ある日の夜、いつものように神父に抱かれた少年は、奴隷少年になぜあんなことをさせるのかと問われます。
苦しくてもあれは祝福だと教えられてきたからと少年は返しますが、その心には疑問も浮かぶのでした。

いよいよ祭壇へ到着。少年は神父に用意はできたと告げますが、神父の様子がおかしいことに気付きます。
神父は少年のことを大層気に入っていたため、贄に捧げるのが惜しくなっていたのです。
そこでかわりの贄として奴隷少年を買ったと。

奴隷少年を殺そうとする神父を少年は止めますが、
その時のもつれで神父の持っていたナイフが神父自らの胸に突き刺さり、絶命。
罪の意識を感じた少年は自殺しようとしますが、それを奴隷少年が止めるのでした。

自分が贄にならなかったことで神がお怒りになると言う少年ですが、
奴隷少年はそれはインチキだと少年に話すのでした。贄により起こる神の奇蹟なんていうものはないと。
その証拠も提示し、少年は全ての事実を知ります。
そして奴隷少年は自分は村に帰るが、一緒に来るかと少年に言うのでした。

「王女見参」
ごくごく普通の中学生、柴田正彦。
ある朝いつものように登校していると、突然謎の女の子に襲われます。
女の子のお付きであるカラスによると、どうやら魔女の国の次期女王であるミラ姫だということですが…。

魔女の国では王位継承権を持つ者は試練を受ける決まりがあり、くじびきで正彦の抹殺に決まったから殺しに来たということです。
そんなことで殺されてはたまったものではないと、正彦は急いで逃げて学校に逃げこむのでした。

しかしミラ姫は学校にも当然追いかけてきます。それも制服を着て目立たないように紛れ込む周到さ。
正彦は学校中を逃げ回りますが、やがて屋上に追い詰められることに。
目一杯助けてくれと懇願する正彦を面白がったミラ姫は、殺すのをやめてくれます。
国に帰って試練の内容を変えればいいと言いますが、そこにミラ姫の監視官が現れてそれはダメだと告げるのでした。

何事も自分の自由でないと気が済まないミラ姫は反抗しますが、
試練のために力をセーブされているため一方的にやられることに。正彦はそれを見てミラ姫を助けに入ります。
するとミラ姫は正彦に突然キス。
ミラ姫は吸血鬼のお家柄であり、キスによって相手の生気を吸い取って力を得ることができます。
そして正彦から吸い取った生気によってセーブされた力を解放し、見事監視官を撃退するのでした。

後日。国に帰っていったミラ姫のことが忘れられない正彦。
一度は自分を殺そうとしていたミラ姫を助けたのは、可愛かったからという不順な動機。
今ミラ姫が何をやっているのか教室で考えていると、突然キスをされます。
その相手はミラ姫。母親に試練を延期してもらったので、しばらくここにいることになったそうです。
そしてお腹がすいたからと正彦はミラ姫に生気をたっぷりと吸われてしまうのでした。

「DRAGON RIDE」
ドラゴンの乗り手であるバトゥという少年が主人公。少年にはレイノーという親友がいます。
ある日のこと。風の竜の乗り手となる御使いを選ぶ儀式があり、レイノーは自分がなりたいと思っていました。
そのレイノーに連れられて儀式を見に来たバトゥ。

儀式とは、竜卵の欠片に触れた全ての者の中から、竜自身が一番ふさわしい人物を決めるというもの。
そして、好奇心から竜卵に触れたバトゥが御使いとして選ばれることに。
そのことで負い目があるバトゥは、以後の3年間の間レイノーと会うことはありませんでした。

3寝のg。御使いに選ばれたバトゥですが、レイノーへの申し訳なさから竜に対して構えた態度を取ってしまいます。
そのせいで竜との意思疎通が上手くいかず、大風を止めるために出撃した際に海へと落ちてしまうのでした。

バトゥが目覚めると、そこにはレイノーがいます。
レイノーに対して正直に自分の気持ちを話すバトゥ。自分じゃなくてレイノーが選ばれるべきだったと。
そんなバトゥを見てレイノーは、外にいる竜の所へ連れていきます。
竜は流木による怪我をしており、それは海に落ちたバトゥを守るためだったということが分かります。
竜は、バトゥが欠片に触れたその時からずっとバトゥのことが好きだったと。

レイノーと竜の思いによってバトゥは吹っ切れ、竜と真っ向から向き合い大風を見事止めるのでした。
そしてレイノーと一緒に竜に付けた名前は「セレン」。意味は、2人の地方の言葉で「晴れの空」。



・感想
上田信舟先生の短編集。
エニックス系と関係があるのは「DRAGON LOAD」と「王女見参」の2作品。
他の作品は他社発行の雑誌で掲載されたものです。
前回取り上げたFEといい、この当時の上田信舟先生はわりと優遇されてる感じあるかも。

ちなみに…エニックス系と関係がある2作品と、「DRAGON RIDE」以外の作品はBLです。
なのでGファンで知ってファンになったという人は、この短編集読んだらビックリするかも…。

「DRAGON LOAD」
実はこの作品、以前取り上げたコミックファンタジーワールドと関係がある。
当時開催された「ファンタジーコミック大賞」の受賞作品を集めたのが「コミックファンタジーワールド」だけど、
この作品はそのファンタジーコミック大賞に応募したものだそうです。

審査結果発表の画像も載せているから持っていない人も確認できるけど、
「ドラゴン・ロード」で佳作になっている「みやまきお」という人がそうなのかな?
アルファベットとカタカナで違うけど、タイトルの読み方自体は同じだし。
一応後でコミックファンタジーワールドの方に加筆修正しておこうか。
ちなみに他のどの雑誌や本にも掲載はされておらず、この短編集が完全な初出。

「空中ぶらんこ」
兄弟愛を描いた作品。BL作品なので、別の意味での愛ですけども…。

「獣の召喚」
これもBL作品。12ページしかないのですぐ終わる。
「空中ぶらんこ」もそうだけど、BL作品は感想書きにくいなぁ。男が読むにはきついっすとだけ。

「降誕祭の夜」
表題にもなっている作品。やっぱりBLです。
前2作はBLでもソフトというか実際にいたしているような場面はないんだけど、こっちは有る。
ページ数も前2作は少なかったけど、これは多め。

「王女見参」
フレッシュガンガンに掲載された読み切り作品。
ありがちな使い古された設定なので特に言うこともなく。
ちなみに魔神転生の連載中に描かれたもの。

「DRAGON RIDE」
これは普通のファンタジー。
BLでもないので抵抗はなく読めるはず。でも個人的にはそんなに面白く無い。

収録情報。
DRAGON LOAD…未掲載(この本が初出)
空中ぶらんこ…GENEROUS 1993年 vol.4掲載
獣の召喚…GENEROUS 1993年 vol.2掲載
降誕祭の夜…イマージュ 1994年 vol.11掲載
王女見参…増刊フレッシュガンガン1996年冬号掲載
DRAGON RIDE…VIRIP 1996年 vol.1掲載

ジェネラスとイマージュはBL雑誌?ですかね。聞いたことないのでよく分からない。
VIRIPも知らんなぁ…。



というわけで2ヶ月半ぶりにエニックス漫画で更新。
上田信舟先生のターンはまだ終わっていなかったんですよ。
本当は4/4に更新する予定だったんだけど、あまりにも忙しくて時間が無く、半分書きかけのままずっと放置状態に。
なので後半の方の作品は内容忘れかけてたという始末。
[ 2013/06/14 ] エニックス漫画 | TB(0) | CM(0)