桜野みねね短編集

ショーウインドウのエミリー 桜野みねね短編集/桜野みねね/全1巻


守護月天でお馴染みな桜野みねね先生の短編集。



・マザードール
千寿院智理という異次元カウンセラーの女の子が主人公。
異次元カウンセラーとは、異なる次元からやってきた心の病んだ患者を治療するのが仕事。
智理はまだ新米であり、初仕事が舞い込んでくるところから物語は開始。

患者は伊吹邪甲という人造人間。
母親は国を造り変えようとしており、そのためにまずは全ての生物を消してしまおうということで、
それを実行する存在として伊吹邪甲を造り出しています。

母親の命令に従っていた邪甲ですが、自分が殺したきた生物の苦しむ様子に何かを感じ取り、
母親の元から逃げ出して智理の住むアース星へとやってきたというわけです。
智理のカウンセリングによって優しさを知った邪甲。
やがて母親が邪甲を連れ戻しにやってきますが、邪甲は自分の意志によって帰ることを決めるのでした。

エピローグでは邪甲が智理に母親のカウンセリングを依頼するという内容で終わり。



・ちゃ・チャ・茶
217年前に作られた急須に宿る精霊の茶都美(ちゃつみ)。
自分の役目は茶をいれることであり、本人もそれを願っていますが、今まで一度もいれたことがありません。
今まで大事に扱われてきましたが、さすがに大昔に作られた急須なので寿命が近づいています。
何もしなければあと10年は生きられますが、最後に一度だけでも…という願いから実体化。

茶都美の宿る急須を持っているのは、高倉星児という若者。
彼女にフラれて落ち込んでいたところに突如茶都美が現れ、
お茶をいれようと頑張っている様子を見てそんな気分が吹き飛びます。

結局お茶をいれることはできませんでしたが、気分転換ということで星児に誘われ映画を観に行くことに。
途中で星児の親友、それに星児が昨日フラれた女の子と出会います。
そっけない態度で別れる星児ですが、茶都美はその時に心の奥底に秘めた感情を読み取ってしまいます。

星児が茶都美を連れてきたのは、フラれた彼女に見せつけることでヤキモチを焼かせることであり、
そのことを素直に茶都美へと伝え、一人帰っていきます。
その場に残された茶都美は、星児の親友から星児が優しすぎて物も人も大事に扱いすぎることを教えられます。

帰宅した茶都美は置いて帰ってしまったことを星児に謝られますが、
ご主人様である星児の思いを知っている茶都美は大事に扱ってきてくれたことに感謝。
人の姿になったんだからお茶をいれること以外にもできることがあると言われ、
優しいご主人様に守られながら生きていくのでした。



・ショーウインドウのエミリー
洋服屋のショーウインドウに展示されている、エミリーというマネキン。
電気で動く踊るマネキンですが、どうしたことか電源を切っても踊り続けたまま。
修理を依頼された機械修理工が調べますが、どこにも異常なし。原因不明でお手上げ。
ちなみにこの機械修理工の息子である木村悠太という12歳の少年も一緒に来ています。

そこに意思を持った機械と会話することができるという、機械除霊師を名乗る相菜真結実が登場。
彼女がエミリーと会話をすると、
原因はショーウインドウの真正面にある道路の向こう側にいる交通整理ロボットであることが分かります。
エミリーはこのロボットに恋をしており、見てもらいたくて電源が切れた状態でも踊り続けていたと。
ですが、真結実はエミリーに電源が切れたら素直に止まるように忠告をします。でなければ壊す、と。

真結実とエミリーが会話するのを見ていた悠太は、
自分にもできるかな?と夜中にこっそりショーウインドウの前にやってきてエミリーに話しかけます。
するとエミリーは動き出し、悠太の話を聞いてくれるのでした。
悠太はずっとここにいられるよう、普通のマネキンとして行動するようにエミリーと約束をします。

ある日、ショーウインドウの前を通りかかった悠太はいつものようにエミリーに話かけます。
しかし、それはちょうど工事が終わって交通整理ロボットが撤去される瞬間でした。
ショックを受けたエミリーは悠太との約束を破って動き出してしまいます。
それを見ていた真結実はエミリーを壊すことを決め、エミリーもそれに従うのでした。

エミリーを壊されたくない悠太は交通整理ロボットに駆け寄り、助けを求めます。
製作者の思いが強い機械だけが意思を持つとされており、
大量生産の量産型である交通整理ロボットは意思を持つはずがないと真結実は決め付けます。
しかし悠太の思いが通じたのか、自らの意思を持って動き出すロボット。
そしてエミリーを助けるのでした。

真結実もこれには感服し、エミリーを壊すのは止めて自らの助手として雇うことに。
交通整理ロボットは自らの仕事があるため、いつも一緒にいられるわけではありませんが、
たまに悠太がエミリーの元を訪れては自転車で交通整理ロボットの所へ送ってあげるのでした。



・大怪盗石川剣推参!!
明治時代のような世界が舞台のお話。
伝説の大盗賊石川五右衛門の血を引く石川剣という青年がおり、彼も大盗賊として名を知られています。
剣にはお目付け役として簓(ささら)という女の幽霊がおり、
彼女は五右衛門から頼まれて代々石川家の跡取りを大泥棒にすべくお目付け役をやっています。

ある日、剣の元に依頼の手紙が届きます。
その依頼を実行するため、列車の車両を盗む計画を立てる剣。
依頼者というのは少年。両親が離婚して母親の元へ行きたいのに父親に引き取られてしまったことから、
剣に自らを盗むように頼んだのでした。

簓の協力もあり、ド派手なパフォーマンスで見事に少年の乗る車両を盗み出す剣。
少年は無事に母親の元へ行くことができたのでした。



・まもって守護月天!遠い日の小璘
「まもって守護月天!」の外伝。
魅花という亡国のお姫様が支天輪でシャオリンを呼び出すところから始まります。

魅花は国を滅ぼされ、両親も亡くしています。
今は数人の家臣と共に隠れ住んでいますが、命を狙う敵国の兵は後を絶たず。
シャオリンを呼び出した魅花ですが、両親を亡くしたショックから誰にも心を開かず、食事も口にしません。
敵国の兵から命を守ることはできても、悲しみから救うことはできないシャオリンは無力さを感じます。

そんな日が続いた頃、敵国の兵が襲ってきます。
シャオリンは家に結界を張りますが、家の中に魅花はいません。結界を張る前に外へ行ってしまったからです。
死んで両親の所へ行きたいと思っている魅花は、殺されることを選んで自ら敵兵の前へ。

殺される寸前でシャオリンが助けに入り、敵兵を追い払います。
しかしその時に斬られてしまい、シャオリンは怪我をしてしまいます。
そして、怪我をしてまでなぜ自分を守るのかと魅花はシャオリンを問い詰めます。
シャオリンは悲しい顔をしながら、「大切な人を失うのは悲しいけど、その悲しみは越えていける」と
魅花に答えるのでした。

心を開いた魅花は食事も取るようになり、以後ずっとシャオリンを頼って生活していくことになります。
やがて老いた魅花に死期が訪れ、その時に魅花は全てを悟ります。
シャオリンがあの時悲しい顔をしたのは、これまで何度も仕えてきた主人との別れを繰り返してきたからだと。
そして今自分もシャオリンを置いて逝かねばならず、最期の瞬間にこう言い残します。
「おぬしも頼れる誰かに逢えるといいな」と。

一転して舞台は現代へ。
初めて頼られるのではなく、頼れる存在である主人(太助)を見つけたシャオリン。
そんなシャオリンの幸せな姿を離珠は魅花に報告するのでした。



・感想
「マザードール」は第1回エニックス21世紀マンガ大賞にて賞をもらった作品。
漫画家デビューのきっかけになった記念すべき作品というわけですな。
後に連載されることになった「Healing Planet」のプロトタイプ的作品でもある。
内容は…微妙かなぁ。絵はうまい。

「ちゃ・チャ・茶」は守護月天のプロトタイプ的な作品。
物から精霊が出てきたり、出てきた精霊がポケーッとしたタイプというのも共通する。
なので、守護月天のパーフェクトガイドブックでも軽くこの作品が触れられていたりする。
感想としては設定は悪くないけどシメが弱く、ここで終わりなの?と思ってしまう。
ちなみにこれはマザードールと一緒にエニックスのマンガ大賞に応募した作品とのこと。
雑誌には一度も掲載されておらず、この短編集が初出。

「ショーウインドウのエミリー」。表題にもなっている作品で、おそらくこの短編集のメイン。
これも悪くはないんだけど微妙かなぁ。もう少し何かが欲しかった。

「大怪盗石川剣推参!」も微妙。
幽霊の簓をもっと掘り下げても良かったかもしれない。
五右衛門に頼まれてお目付け役をやってるって説明だけではなく、
どうして頼まれることになったかの経緯とかね。

最後に「まもって守護月天!遠い日の小璘」。
本編の方でも少し語られていた、シャオが過去に仕えていたという亡国のお姫様のお話。
作品としてはこれが一番面白かったかな。離珠も出てくるので、離珠好きな人にもオススメ。

カバー下には「その後のおはなし」として、この短編集に収録されている5作品のその後が掲載。
邪甲、星児、悠太、簓、魅花という、それぞれの作品の準メインキャラによる談話形式。

最後に雑誌掲載情報。
「マザードール」…月刊Gファンタジー平成7年7月号掲載
「ちゃ・チャ・茶」…未掲載(この本が初出)
「ショーウインドウのエミリー」…増刊フレッシュガンガン平成8年冬季臨時増刊号掲載
「大怪盗石川剣推参!!」…増刊少年ガンガンWING平成8年秋季臨時増刊号掲載
「まもって守護月天!遠い日の小璘」…増刊少年ガンガンWING平成9年夏季臨時増刊号掲載
[ 2012/09/09 ] エニックス漫画 | TB(0) | CM(0)

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