天馬の風

天馬の風/松葉博/全2巻


ガンガンWINGで連載されていた作品。



・内容
京都の北方に位置する愛宕山。
ここでは古来から天狗伝承が根強く生き続けており、信仰の対象として天狗が祀られています。

日本古来の武道「古武道」に天狗の能力を組み入れて誕生した「神天扇流」という流派があり、
愛宕山のふもとに道場があります。
天狗の能力を現代に受け継ぐ天狗一族の末裔…それが扇道場です。

主人公は扇天馬(おうぎてんま)という14歳の少年。扇道場の師範の息子であり、天狗の血を引いています。
同級生で扇道場の門下生でもある、伊吹七々緒(いぶきななお)という女の子がメインヒロイン。

いつものように七々緒と一緒に学校へ通う天馬。
登校途中で荷車から牛が脱走して騒ぎになっている現場に遭遇。
牛はとある少年のところへ突撃していきますが、その少年は見たこともない動きで牛を投げ飛ばすのでした。

学校が終わり、実家でもある扇道場へ帰宅する天馬。
するとそこには、今朝見たあの少年がいます。
少年の名前は結城硝(ゆうきしょう)。父親によると、今日から扇道場の下宿生になるとか。

父親の提案で実戦形式の練習を行うことになった天馬と硝。
硝は鬼神覚真流という流派であり、一方的に天馬を追い詰めていきます。
しかしここで天馬は生まれて初めて風を発つ天狗の技を使い、なんとか相打ちに持ち込みます。
最初は馬鹿にしていた硝ですが、これによって天馬を見直し二人は親友兼好敵手となるのでした。

ある日、扇道場に一人の女性がやってきます。名前は扇汐音(おうぎしおね)。
3つ歳上の天馬の従姉で、6年ぶりの再会。彼女も天狗の血を引いています。
天狗の能力は女系には受け継がれにくく、風の力は使えないかわりに気の力を操ることができます。

1ヶ月後に愛宕山で行われる愛宕山戦神祭という武術大会があり、天馬たちはそれに参加することに。
そこで汐音が天馬たちを鍛えるためにやってきたというわけなのでした。

そして1ヶ月後、いよいよ愛宕山戦神祭が開幕します。
まず8ブロックに分かれて予選が行われ、各ブロックの上位2人が決勝トーナメントへ出れるという仕組み。

試合前の会場で、怪しい3人組を発見する天馬たち。
その中には前回の優勝者である夜叉雷童という大男もいます。
硝は雷童の隣にいる長髪の男を見て気分が悪くなり、すれ違い様に名前を呼ばれて困惑するのでした。
「なんでボクの名前を知っているんだ」と…。

天馬、硝、七々緒、汐音の4人は順調に予選を突破。例の3人組も予選を突破しています。
そして始まる決勝トーナメント。
いきなり七々緒と雷童が当たることになり、七々緒は全力を出し尽くすも完敗。
雷童は七々緒を1人の格闘家として認め、正々堂々と勝負して勝利したのでした。

3人組の1人と1回戦で対戦した仲間から、相手が邪眼という力を使うという情報を入手する天馬たち。
汐音によると、愛宕山は霊山であるそうです。
霊山とは妖怪や物の怪が住んでいた聖域であり、それぞれの一族がそれぞれの山を持っていたと。

しかしそんな日本にある霊山全てを我が物にしようとする一族が現れ、
力の弱い一族は次々と自分たちの山を明け渡していきました。
ほとんどの霊山がその一族に支配されますが、最後まで戦い続けたのが天狗の一族。
相手の一族の長に深手を負わせ、一応の決着が付いたと。その最後の戦場となったのが、この愛宕山。
そしてその一族の特徴が、邪眼と呼ばれる瞳。雷童たち3人組はその一族の末裔だったのです。

2回戦で雷童と戦う汐音。しかし力の差は歴然で、あっさり負けてしまいます。
しかし七々緒の時といい今回といい、邪眼の力を使わず正々堂々と戦う雷童。
それを見た汐音は、3人組の要は雷童ではなく紫鬼一角(しきいづみ)という長髪の男だと確信するのでした。

残虐な戦い方で相手を倒していく紫鬼。
それを見た天馬はキレてしまい、自分の中に眠る天狗の血を目覚めさせて紫鬼に襲いかかっていきます。
しかし邪眼の力で動きを止められ、攻撃を食らって気絶。
紫鬼は天馬にトドメを刺そうとしますが、雷童が止めに入ってかわりに攻撃を食らうのでした。

天馬は天狗の血に悩んでいて、自分が自分でなくなる恐怖に怯えています。
力を開放してしまえば殺戮衝動に乗っ取られ、支配されてしまうのではないかと。
紫鬼に襲いかかっていった時の天馬はまさに殺戮衝動に支配されており、気絶させられたのは不幸中の幸い。
硝は天馬の感じる自分が自分でなくなる恐怖というものを、自らも紫鬼を見る度に感じているのでした。

雷童は紫鬼の攻撃によって負傷したことから、準決勝は不戦敗。天馬が自動的に決勝へと駒を進めます。
汐音は雷童がまともな心を持っていると分かり、医務室で目的を聞き出します。
雷童によると、彼らは鬼の一族なんだとか。
紫鬼はかつての恨みを晴らすため、ここ愛宕山で天狗の血を引く扇一族を皆殺しにするのが目的だと。
鬼の一族とは血の繋がりがあるわけではなく、生まれた時に鬼の魂を持っている者のこと。
紫鬼は鬼の魂を持つ人間を鬼の能力に目覚めさせることができるのだそうです。

準決勝で紫鬼と対決する硝。
実は硝は鬼の魂を持ち合わせており、紫鬼によって目覚めさせられてしまいます。
鬼に目覚めた硝は大暴れ。会場はめちゃくちゃになり、もはや戦神祭どころではありません。

観客が全員逃げ出して誰一人いなくなった中、硝を止めるべく天馬は闘いを挑んでいきます。
しかし鬼に目覚めた硝はあまりにも強力であり、一方的にやられた天馬は硝に木に向かって投げ飛ばされ、
木の枝が体を貫通してしまうのでした。

天馬が「オレは死んだのか…」と思っていると、謎の声が聞こえます。
それは天狗の能力を開放しない天馬を諭すものであり、天馬は初めて自らの意思で能力を開放。
殺戮衝動に支配されることもなく、天狗の能力によって硝の鬼の魂だけを消し去って元に戻すのでした。
それを見ていた紫鬼は、「次に会うのを楽しみにしている」と言い去っていくのでした。

エピローグ。
戦神祭から1ヶ月が経過。
いつものように迎えに来る七々緒ですが、汐音から天馬と硝は朝稽古に行ってしまったと聞かされます。
このままじゃ学校に遅刻する!と怒る七々緒ですが、
稽古をする2人の姿を見ているとそんな気持ちも吹き飛び、優しく微笑むのでした。



・感想
ガンガンWINGで連載されていた格闘漫画。
機動少年XXの時にも書いたけれど、当時のガンガンWINGは季刊誌だったので全8話だけど丸2年かけて完結。

絵柄的には格闘漫画ってタイプの作者じゃないよなぁ…。ファンタジーや恋愛系に向いている。
「まつぼっくりH・M通信」という巻末に載っているあとがきマンガによると、
格闘技には全くのド素人だったけど担当に言われて描くことになったそうな。
ちなみに松葉博先生はこれが初の連載作品だそうで。
「まつぼっくりH・M通信」は1・2巻両方にあって、2巻では主要キャラの詳細プロフィールなんかも。

内容的には無難。面白いというわけではないが、つまらないわけでもない。
単行本の表紙は1・2巻合わせて1枚の絵になっているというこだわり。
物語としては紫鬼との決着が付いていなかったりですが、たぶん打ち切りではないと思う。
表紙からして2巻で終わらせるつもりだったっぽいし、実は…。

謎が残る部分としては、天馬の兄。
空馬という兄がいて、8年前から失踪中。とはいっても今でも汐音とはよく会っていて話をしている。
紫鬼とも因縁があるようで。
しかし汐音って17歳のわりには見た目が大人っぽすぎる。高校生にはとても見えん。

あとこの作品、最初は読み切りで掲載されていたりする。読み切り版の天馬は高校生で、性格も違う。
できればこの読み切り版も収録してもらいたかったところ。
新装版が出ているようだけれど、そっちには載っているんだろうか?

そういえば整理する時に作者別で分けたはずなのに、タクティクスオウガとは別々に保存されていたなぁ。
あれも松葉博先生の作品。やっぱり格闘漫画よりはファンタジーの方がいいかな。
[ 2012/10/01 ] エニックス漫画 | TB(0) | CM(0)

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