空の謳

空の謳 天野こずえ短編集2/天野こずえ/全1巻


天野こずえ先生の短編集その2。



・空の謳
天空に浮かぶ島エデン。ここは裕福な特権階級の人間のみが住むことを許されている土地です。
エデンには億に1人の確率で生まれる優良種がいて、癒しの謳声を持っています。
この優良種はセレナという娘で、世界は今日も彼女の謳声で満たされているのでした。

羨望の眼差しで頭上のエデンを見つめながら、大多数の人間は貧困と犯罪に溢れた地上に住んでいます。
どんなに危険な仕事でも引き受ける命知らずな運び屋のカミーユ。
彼はエデンにいるセレナを誘拐してくるよう依頼され、見事それを達成します。

セレナは生まれてからずっとエデンにいたため、地上には出たことがありません。
初めて体験する地上に眼を輝かせるセレナ。カミーユは呆れますが、今日だけはいいかと好きにさせます。

買い物を進めていくと、途中で子供によってひったくりに遭いますが、カミーユは子供を攻撃してそれを取り戻します。
それを見たセレナは悪者でも暴力を振るうのは良くないとカミーユを諭しますが、
エデンで何一つ不自由のない生活を送ってきたセレナに何が分かるのかと反論。
こんなことを続けていたら大人になる前にカミーユは死んでしまうと言い、セレナは泣くのでした。

セレナは生きていること自体が素晴らしいことだと言い、カミーユに夢を持つよう薦めます。
セレナの夢は、素敵なおばあさんになること。変わった夢です。

そんな時、エデンからセレナを連れ戻しに来た連中が現れます。
逃げて撒いても不思議とすぐに居場所を突き止められてしまうことに疑問を感じるカミーユ。
連中は、セレナの体内には発振器が埋め込まれていると言います。
1億人に1人の貴重な優良種であるセレナが生きているうちは、決してエデンからは逃さないためだと。

これを聞いたカミーユは、セレナには何の自由もなくて地上に住む人間の方がマシだと言い放ちます。
そして抵抗をしますが、連中は容赦なくカミーユを攻撃。カミーユは瀕死の重傷を負ってしまいます。
これを見たセレナは、カミーユのためにエデンへ戻ることを決意。
引き止めるカミーユにキスをして去っていくのでした。

それから1週間。カミーユは一命を取り留めましたが、エデンからセレナの謳声は聴こえなくなっています。
セレナ誘拐を依頼した人間は、失敗したカミーユを攻めることはしません。
その理由は、優良種というのは寿命が極端に短いということ。
仮に誘拐が成功していたとしても、すぐに死んでしまっていただろうと。
ここ最近セレナの謳声が聴こえなくなったのは、もう死んでしまったからではないかと言うのでした。

これを聞いたカミーユは、まだ治りきっていない怪我もそのままに再びエデンへ向かうことを決意します。
「素敵なおばあさんになりたい」という変わった夢は、寿命が短くて老人までは生きられないことを知っていたから。
そして自分の負った傷が1週間で治り始めたのは、セレナが自分のために謳ってくれているからだと。
カミーユはセレナが絶対にまだ生きていると信じ、必ず迎えに行くと心の中で誓うのでした。



・魔法の郵便屋さん
7月の北海道。小学6年生の少年そらは、同級生の涼子に毎日のように郵便局へ連れだされています。
この郵便局を1人で任されている綾乃というお姉さんの趣味で、普通の郵便局から魔法の郵便屋さんへと改造されています。

綾乃お姉さんは魔法が使えると言い張っていますが、誰も信じていません。
郵便局にあるポストも何でも願いが叶うポストだということですが…。

ある日、そらは涼子が転校するという話を同級生から聞きます。
このことはそら以外の全員が知っており、
毎日遊んで親友だと思っていた涼子に話してもらえてなかったことにそらはショックを受けるのでした。

そらが綾乃お姉さんに相談すると、言葉で伝えられないなら手紙で伝えようと言われ、手紙を書くことに。
しかし涼子との関係は気まずくなり、結局手紙を渡せないまま引越しの日がやってきます。
見送りに行くこともせず、そらは魔法のポストに手紙を投函。そこに綾乃お姉さんが現れます。
綾乃お姉さんは涼子から手紙を預っていると言い、そらに渡します。そこには「いくじなし」の文字が。

綾乃お姉さんは嫌いだからそらに話さなかったのではなく、好きだからこそ引越しのことを話せなかったんだと言います。
そして投函したはずの手紙をそらに渡し、今からこの手紙を涼子に届けに行こうと言い、ほうきにそらを乗せて空を飛びます。
そう、綾乃お姉さんは本当に魔法使いだったのです。

涼子の乗っている汽車に追いつき、手紙を渡すそら。
そこには「いつまでも友達でいような」と書かれていたのでした。
これを読んだ涼子は、そらがバッグにしまっているラブレターをさっさと渡すように言います。
何でそれを知っているのかとそらが問うと、涼子は「そらのことが大好きでずっと見てきたから」と。
でもしょうがないので手紙のようにずっと友達でいることを決め、そらに頑張れと言って汽車は走り去っていくのでした。

綾乃お姉さんからラブレターのことを追求されるそら。
最初は誤魔化そうとしますが、涼子から勇気をもらったことで決心。渡すことを決めます。
郵便屋さんとして意中の彼女のところへ必ず届けると誓う綾乃お姉さんに、そらはラブレターを渡します。
「この手紙を…綾乃お姉さんに届けてください」と。



・ANGEL VOICE
学園祭。美術部に所属する平松駆(ひらまつかける)は、毎年恒例の展示会の当番をしています。
外は賑やかですが、展示会には人一人来ず閑古鳥。
駆が退屈していると、そこに白いワンピースを着たすっごい可愛い娘がお客としてやってきます。

キョロキョロしている彼女に駆が話しかけると、
驚いた彼女はニコニコと笑いながら「いきなり話しかけないでよ…ボケナス君」と言うのでした。
さわやかに凄いことを言われたような…?と駆が混乱していると、外から誰かを探す騒がしい声が。
それに気付いた彼女は咄嗟にカーテンへと身を隠し、教室内には男たちが入ってきます。
白いワンピースの女の子を見かけなかったかと駆は男に聞かれますが、
ただならぬ雰囲気を察した駆は誰も来ていないと言って追い払い、彼女にもう大丈夫だと言うのでした。

「別に助けてくれなんて頼んだわけじゃないんだからっ!お礼なんて言わないわよっ!」と言う彼女に、
そんなことは思っていないと答える駆。
すると彼女は、いくら自分が超カワイイとは言え、立て続けに失礼なことを言われて怒らない駆を変わっていると言います。
そして一応お礼を言われるのでした。

駆が先ほどの男について質問をすると、あれは彼女の事務所のマネージャーとスタッフだということです。
近くのアフレコスタジオで仕事があり、それを逃げ出して近くで学園祭をやっていたこの学校に逃げ込んできたのだと。

彼女の正体は、高岡春夏(たかおかはるか)という16歳の現役女子高生アイドル声優。
なまじ売れてしまったばかりに過密スケジュールで休みも取れず、辛いことばかりでバックれてきたのだと言います。
そして春夏は「せっかく学園祭に紛れ込んだんだから案内してよ」と言い、
教室に置いてあった他の美術部員の女子の制服に着替えて駆と一緒に学園祭を楽しむのでした。

内気な駆への仕返しとばかりに、校庭にてみんなの目の前で写真部に2ショット写真をわざと撮影させる春夏。
撮影の瞬間に春夏がしたある行動によって、駆が石化してしまうのでした。そして周囲からは大歓声。
その騒ぎを見て駆けつけてきた、春夏の事務所スタッフたち。春夏は駆と一緒に逃げ出すのでした。

文化祭も終わりが近づき、スタッフを撒いて2人きりになった駆と春夏。
駆は春夏にそろそろみんなのところに戻った方が良いと言います。
いろんな苦労はあると思うけれど、簡単に逃げ出して迷惑をかけてはいけないと。
そして、好きなことを仕事にできて夢を叶えたんだから凄いことだとも。

それに対し、春夏は駆に本音を話します。本当は自信がないと。
駆の好きな絵の世界と同じで、プロになるのは大変だけどプロでい続けるのはもっと大変。
毎年自分より若くて才能のある新人が入ってきて、その分誰かが消えていく。
今現在チヤホヤされているだけに、本当は才能がなくてすぐ飽きられて業界から消えてしまうんじゃないか。
そうなった後の自分は、何の取り柄もないつまらない人間だから…と。

そんな春夏に、駆は全力で反論をします。
はじめて春夏に出会って名前を呼ばれた時から、素敵な声だと思ってドキドキしていたと。
たったの一言で人の心を動かせるのは凄いことで、それは春夏の努力と才能の証だからもっと自信を持っていいと。

これに目が覚めた春夏は、精一杯悔いの残らないように頑張ることを決意します。
そして、もしもまた自分に迷った時は必ず逢いに来るから覚悟しておくようにと言い、戻っていくのでした。

学園祭が終わってしばらく経ったある日、美術部でTVを見ていた駆は同じ美術部の女生徒に声を掛けられます。
その番組でヒロイン役をやっている声優は今人気No.1で、声もかわいいし演技もうまいと。
これを聞いた駆はまるで自分のことのように、「ありがとう」と答えるのでした。

あの日以来、TVやラジオから彼女の声が聴こえてくる度に、自分に発してくれた彼女の声が蘇ってきます。
手元に残ったのは、写真部に撮ってもらった1枚の写真だけ。
それは駆の腕を抱きしめ、駆の頬にキスをする春夏の姿が写った写真。
駆はそれを見ながら、「いつの日か…もう一度逢える日が来るのかな?」と思うのでした。



・アース
西暦9500年。人類は輝かしい第二次宇宙時代を迎えていました。
地球人口の増加に伴う近隣の星々への進出。
あまねく銀河の中、人類に入植される世界は数千にも及んでいます。

かつての人類の「ふるさと」である地球に酷似した惑星は、その名を取って新地球と呼ばれています。
通称「第5地球」と呼ばれている惑星ガスタブル。
地下資源の枯渇と環境悪化により全面撤退が決まったこの惑星も、その中の1つ。

ガスタブルには移民船が到着し、次々とこの星の住民を収容していきます。
そして遅刻してなかなか現れない最後の2人を待つ、移民船のキャプテンであるワオ。
上司にまだ回収できないのかと怒られるワオですが、そこにようやく1人の少年がやってきます。名前は虎哉(とらや)ヨウタ。
さらにバイクに乗ってやってきた最後の1人は、文明堂(ぶんめいどう)カステラという少女なのでした。

虎哉とカステラの2人を収容し、いよいよ移民船は出発します。
2人が遅刻している間に先に収容した住民のコールドスリープは済んでいて、封鎖されています。
なので、2人は乗務員用の予備室にある予備の冬眠装置を使うことに。

連絡が入るまでの間、予備室にて会話をする虎哉とカステラ。
移民船は大気圏を突破し、目の前には自分たちが今まで住んでいた星が見えます。
直接自分の星を見るのが初めてな虎哉は綺麗だと感動しますが、カステラはそれを否定。
そして虎哉ホログラムデータを渡します。

ホログラムデータには地球が映っていて、虎哉はそのあまりの美しさに衝撃を受けます。
ガスタブルは赤茶色の星であり、青い星である地球とは全くの別物。
それなのに、なぜ地球と酷似した惑星とされていたのか。カステラは、それを政府による情報操作だと言います。

人類は新たな星に移住する度、その星を住みやすい環境へと人工的に変えていきます。
資源も発掘し尽くすため、どんどんとやせ衰えていってやがて人が住めなくなると。
その事実を大衆に知らせると面倒なことになるので、嘘を吐いているということです。

虎哉はこんな重要なデータをなぜ持っているのかと聞きますが、カステラは「どうだっていい」と誤魔化します。
そのやり取りをこっそり見ていたキャプテン・ワオは、どうでも良くないと指摘。
しかしこのことは3人だけの秘密とすることにし、準備が整った冬眠装置に2人は入るのでした。

星間を旅する者は、客観時間にして数百年というとてつもない時間の長旅をすることになります。
その間は冬眠装置で眠り続け、最新テクノロジーのワープ航法を繰り返しながら目的地を目指します。

やがて冬眠装置が解除され、目覚める虎哉。
目の前に広がるのは青い星…地球そのものでした。一足先に目覚めていたカステラは、それを見て感動しています。
その時でした。全身を防護服で身を包んだ謎の連中が予備室内へ突如押しかけてきて、催眠ガスを発射。
突然のことで為す術もなかった2人は眠ってしまい、捕まってしまうのでした。

虎哉が目覚めると、目の前では謎の連中が大層慌てています。
虎哉が目覚めたことにも気付いていないようで、隙を見て虎哉は脱走するのでした。
一方、1人だけ別の部屋に閉じ込められたカステラ。
こうなった原因はあのホログラムデータをキャプテン・ワオに知られてしまったからだと考えます。

虎哉はカステラが捕まっている部屋までやってきて、彼女を救出。2人で逃走を続けます。
何で自分たちを閉じ込めようとするのか疑問に思っている虎哉に、カステラは真相を話し出します。
あのホログラムデータは、カステラの両親が政府の極秘ファイルに違法アクセスして無断でコピーしたものだということ。
それをキャプテン・ワオに知られてしまったため、上層部に問い合わせて目的地に着く前に逮捕するつもりだろうと。

カステラの両親は宇宙開拓に意義を唱える環境学者で、
地球のホログラムデータを公開することにより、人類による惑星の環境破壊に警鐘を鳴らそうと考えていました。
しかし結局公開前に捕まってしまい、カステラは最後に両親から身の安全のためにデータを全て消すように言われたと。
でも両親が命をかけて守ろうとしたデータを消すのは悔しいということで、こうして持っていたということです。

逃走を続ける2人ですが、虎哉が階段の手摺で滑ってしまい、とある部屋の中へと入ってしまいます。そして閉じられる扉。
その部屋は、先に乗り込んだ住民たちをコールドスリープしていたメイン客室。
虎哉が冬眠装置の1つの覗いてみると、中には腐敗したミイラと化した人間がいるのでした。

扉が閉まっていて部屋の中に入れないカステラは、驚く虎哉が何を見たのか分かりません。
そしてそこにやってくる謎の連中。
連中は「今は非常に危険な状況下にあり、安全な場所に移動してから説明するから、大人しくついて来るように」と言うのでした。

場所は変えたものの、再び1人だけ隔離されるカステラ。
やっぱりホログラムデータが原因なのかと思いきや、謎の連中はそれを否定。
そして防護服の頭を脱いだ4人の連中の中には、あのキャプテン・ワオがいたのでした。

ワオの説明によると、この船で生き残っているのは虎哉とカステラを含めても6人だけだとか。
ワープ航法で通常空間に戻ってきた場所に運悪く隕石があり、メイン客室に衝突をしてしまったのだそうです。
その隕石には有害な宇宙物質が含まれていて、みるみる内にメインの酸素タンクを汚染。
その結果、メイン客室と乗組員たちの冷凍装置に汚染された空気が送り込まれ、全員が腐敗死をしてしまったと…。

遅刻してきた2人とそれに対応した4人の乗組員は、予備の冬眠装置を使っていたために助かったと。
予備の冬眠装置はサブの酸素タンクから酸素が供給されるので、汚染された空気を吸わずに済んだというわけです。
一足先に目覚めた乗組員たちは異常事態を知ってすぐに汚染空気の除去作業を始めましたが、
自分たちも混乱していたので、虎哉とカステラを動揺させないためにあのような強引な手段に出てしまったのだそうです。

そしてここでキャプテン・ワオの口から衝撃的な事実が明かされます。
船内の除去作業は完全ではなく、先程の脱走劇の最中にカステラだけが感染をしてしまった…と。
有害物質は完全に未知の新種なために治療法は存在せず、
死亡した人のデータからは発症してから1週間以内に死に至るとされています。

ショックを受ける虎哉ですが、カステラは虎哉が感染してなくて良かったとホッとするのでした。
自分勝手な思い込みで脱走劇に付き合わせてしまったので、もし虎哉が感染していたらやり切れなかったと。
そして完全に隔離されるカステラ。
虎哉は何でこんなことになったのかと悔しがりますが、そこにワオが「大事な話がある」と言ってやってくるのでした。

翌日。カステラが隔離されている部屋に防護服で完全防備をした4人の乗組員がやってきます。
1人では寂しいだろうということでカステラとトランプをして遊んでくれるのでした。
虎哉はカステラのことを気にして、ずっと部屋に閉じこもっているということです。

ここでカステラは、ワオから詳しい病気の説明をされます。
この病気は冬眠しても進行が止まらないこと、発病3日ほどで全身が悪寒と発熱で蝕まれること、
完全死する7日より前の5日目には痛みにより発狂死してしまうということを…。

未知の病原菌なので受け入れは拒否されたものの、データ自体は目の前に広がる第18地球に送ったので、
後は運良くそれまでにワクチンが完成することを祈るしかないと。
メインの酸素タンクがやられたことにより船内の酸素も残りわずかなので、
カステラは小型シャトルで出て周回を軌道しながら最後の瞬間まで朗報を待つことになる…ということです。

激痛が始まる明後日までにワクチンができる可能性はまずないため、
カステラは「シャトルが出たらすぐに爆破してくれれば楽なのに…」と言います。
ワオはその願いを聞き入れ、望み通りにすることを約束するのでした。

2日目。今日も虎哉は来ません。
寂しがるカステラを見て、ワオは虎哉のことを好きなんでしょうとからかいます。
顔を赤くして否定するカステラですが、心の中ではもうすぐ死んでしまうというのに来てくれない虎哉に怒っているのでした。

ついに3日目。カステラがシャトルに乗って出発する日です。
乗組員はシャトルに乗り込もうとするカステラに別れを告げ、カステラもそれに答えます。
結局最後まで虎哉は来てくれないのか…と思っていると、そこにようやく虎哉が駆けつけてくるのでした。
虎哉は妹の大切な物だという猫のぬいぐるみをカステラにもらってほしいと言い、渡します。
そして最後にカステラを強く抱きしめ、「元気でね…」と言って別れを告げるのでした。

発射されたシャトルの中、カステラは虎哉に渡された猫のぬいぐるみに道連れにしてしまうことを謝ります。
そしてシャトル爆破までのカウントが10を切り、「こんな贈り物よりも虎哉に一緒にいてほしかった」と呟くカステラ。
とうとうカウントはゼロになり…爆破するのでした。

実際に爆破されたのはカステラの乗っていたシャトルではなく、移民船の方。
背後の爆破音に気付いたカステラがそれを見て呆然としていると、背後から誰かの声がするのでした。
「発病したのは実はカステラではなく、彼らだったんだ」と。

振り向いたカステラの前にいたのは、虎哉からもらった猫のぬいぐるみ。
自らを虎哉のぬいぐるみをベースにした知能ロボットだと名乗り、この3日の間で造られたのだと言います。
これから独りぼっちで生きていかなくてはいけないカステラが少しでも寂しくないように…と。

いまだ混乱をしているカステラに、猫のぬいぐるみは真実を話します。
あの船の中ではカステラだけが健康体で、実際に発病したのは乗組員たちの方だったと。
目覚めた乗組員たちはメイン客室の異常に気付いてすぐさま駆け付け、調査を進めて原因を特定。
しかし、その時彼らは防護服を着ていなかった。

虎哉とカステラが目覚めた時に船内の汚染除去作業を必死にやっていた彼らは、すでに感染をしてしまっていた。
2人が誤解をして脱走した時にはまだメイン客室の汚染除去は完全ではなく、
その中に滑り込んでしまった虎哉もまた感染をしてしまった…と。
一人だけ生き残ることになるカステラを気遣い、最後の最後まで彼らは芝居をし続けてくれたというのが真相です。

真実を知って泣き続けるカステラを見かねた猫のぬいぐるみは、カステラを励まします。
その声を聞いたカステラは、猫のぬいぐるみが虎哉だと確信をします。
ワオの好意でロボットの記憶因子に虎哉の記憶を丸3日かけてコピーしたため、その間会いにいけなかったと。
そしてカステラに淋しい思いをさせてごめんと謝るのでした。

ホログラムデータを通して考えを人々に知ってもらうため、
カステラは目の前に広がる星に導かれて生き延びたのだと虎哉は言います。
そして「さあ行こう…アースが迎え入れてくれる」と言って、シャトルは第18地球へ向かうのでした。



・感想
似たようなものが多かった前作とは違って、どれも異なるジャンルに挑戦をしている。

「空の謳」
表題にもなっている作品で、世界観はファンタジー。
表題になるぐらいだからこの本のイチオシでメインなんだと思うけど、何も感じるものはなかった。

「魔法の郵便屋さん」
北海道ということで現代日本が舞台だけど、全体的にメルヘンチックな内容。
綾乃お姉さんは明るく元気で変わり者。作品としては…普通かなぁ。

「ANGEL VOICE」
世界観は完全に現代日本。高校を舞台としていて、前作「夢空界」に収録されていてもおかしくない感じ。
ヒロインが現在人気絶頂の現役女子高生アイドル声優ということで、魅力的に描かれている。

この作品は90年代に描かれたものだけど、当時からアイドル声優っていたのか?
自分は漫画とゲームに関しては自他共に認めるオタクだと思っているけど、
不思議とアニメはほとんど興味がないので、当然声優にも興味がなくその辺の事情がよく分からない。

「アース」
未来を舞台としたSF作品。今から7500年後だから近未来ではないね、さすがに。
この短編集ではこの作品が一番よくできていると思う。
環境汚染とバイオハザードという2つのテーマを合わせたストーリーは悪くない。

ずっとカステラが感染していたのだと思わせておいて、実は逆だったという意外性が最大のポイント。
自分は虎哉がカステラに会いに来なかった時点で予想できてしまったので想定の範囲内だったけど、
それでも少なからず衝撃は受けたし「やるな」とも思った。
前作「夢空界」に収録されている「刹那の夏」よりも意外性があって良い。

巻末には前作と同じく、あとがき漫画の「ものぐさ倶楽部~番外編2~」がある。
この本に収録されている作品の思い出を振り返るというのも同じ。
カバー下の表に主人公ズ、裏に思い出写真という描き下ろしの内容も共通。

収録情報。
空の謳…月刊少年ガンガン平成10年5月号掲載
魔法の郵便屋さん…月刊少年ガンガン平成10年8月号掲載
ANGEL VOICE…月刊少年ガンガン平成10年10月号掲載
アース…月刊少年ガンガン平成11年1月号掲載
[ 2012/12/12 ] エニックス漫画 | TB(0) | CM(0)

コメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://farewall.blog123.fc2.com/tb.php/1194-15c4dfdd